桜の花咲く四月。 まもなく、福ちゃんに異変?が起こりました。 来る日も、来る日も、何故か胸をしめつけられる日々が続くようになったのです。 …恋です…初恋です…。 福ちゃんの初恋です。 彼女の名は、聖子ちゃん。 背は高く色白で、どちらかというとふっくらとした感じ。 いつも、穏やかな微笑みで福ちゃんに接しくれる… そう、「モナリザ」のような人…。 ある日、福ちゃんは思い悩んだあげく、ついに聖子ちゃんに告白しました。 しかも、英語で… 「アイ・ニード・ユウ」と…。 すると聖子ちゃんは、あくまでも穏やかに微笑んだ顔で言いました。「ありがとう」とひとこと。 その日から、聖子ちゃんと福ちゃんの、淡い初恋がスタートしたのです。 ある日二人は、生まれて初めての「デート」をしました。 場所は、離湖(はなれこ)公園。 手をつなぐわけでもなく、ましてや腕を組むわけでもなく、少し離れて、ただ黙々と歩いた散歩道。 小高い丘に、少し離れて腰をかけ、「寒くない?…」 どこかで、秋祭りの太鼓の音が鳴り響いていたっけ… どのくらい、時間が過ぎたんだろう。 「こんど、福ちゃん家に遊びに行っていい? 「ああ、いいよ。僕ん家分かる? 「うん この前、近くまで行ったから 「じゃあ、次の次の日曜日に待ってる 「うん… 「じゃあ… 「じゃあ… 聖子ちゃんと福ちゃんの淡い恋は、手をつなぐこともなく、口づけを交わすこともなく、 やがて来る惜別の時まで続いていくのです…