心地よい眠りから、ふと目を覚ました小鈴ちゃんと福ちゃん。 長い時間ゆられていた列車も、いよいよ終点です。 「へぇ〜、ここが福ちゃんが生まれた町かぁ。なんか、懐かしい気がするなぁ〜」 愛を誓い合った二人の、新しい人生の旅立ちです。 二人はさっそく、福ちゃんが生まれ育った『福ちゃん家』へと向かいました。 途中、バスの中から甘酸っぱい思いの残る、「離湖公園」が見えました。 突然、福ちゃんは言いました。 「小鈴ちゃん、ここで降りよう。」 「えっ、もう着いたの?」 「いや、ボクん家はまだだけど、思い出の場所があるんだ。行こう!」 二人が着いたのは、福ちゃんの初恋が始った、あの場所でした。 小高い丘の上のベンチに、寄り添って腰をかけた二人 … 「ねぇ小鈴ちゃん、ほんとにボクと一緒でいいんだね。」 「うん、もちろんだよ。あたし、決めたんだもん、福ちゃんと一緒って。」 「何にも無いんだよ。一からの出発なんだよ。」 「うん、だいじょ〜ぶ だいじょ〜ぶ。」 「ありがとう。じゃぁ、少し遠いけど、ここから家まで歩いていくか … 」 「うん、そうしよう。早く見たいよ、福ちゃん家。」 離湖公園から30分程歩き、とうとう二人は、懐かしい『福ちゃん家』へと着きました。 何年も空き家だったせいか、家の周りには雑草が生い茂っています。 玄関の戸を開けました。 あの日、福ちゃんが出ていった時のままです。 「うわぁ〜、福ちゃん家だぁ。」 奥の方から、今は亡き父母が「お帰り」と言ってくれたような気がしました 遠くから、秋祭りの太鼓の音が聞こえてきます…